column
コラム
2022年12月19日
高い擁壁と植栽のデザイン
擁壁は上手に修景すればアートになります。
新しく造成された山手の住宅地では、敷地と道路の間に
高低差があり、高い擁壁がつくられている場合が多くあ
ります。
高低差のある住宅地では、歩行者の視線で認識さ
れるまちなみは、高い擁壁の設えが強烈で景観を
阻害しているものも見受けられます。
このような場合、擁壁と植栽を上手に組み合わせる
ことで、これらの課題は大幅に改善されます。
①高い擁壁を修景するポイント
高い擁壁は、敷き際に緑を配植することで印象がやわらぎ
ます。
植栽スペースは、駐車場や階段アプローチと一体に計画す
ることで、統一されたデザインにすることがポイントとな
ります。
擁壁と一体に計画された植栽スペースは、各戸の住まい手
の花壇やハンギングによる花飾りなどの演出が可能となり、
まちなみの景観ともなります。
高い擁壁を修景するポイントは、以下のようにまとめられ
ます。
1)圧迫感を感じさせないように敷地境界よりセットバック
して、敷き際に植栽を施します。
2)高さを感じさせないように下部にフラワーボックス
(植桝)、上部から下垂れ性の植物などで擁壁本体部分の
見えがかりを小さくして、視線の当たる部分は極力緑化に
努めます。
3)フラワーボックスや擁壁の天端など、人の目線の高さ
に近い部分は、住まい手の管理に委ねることで、個性を生
かした演出となります。
また、管理しやすいように灌水装置を設置します。
4)高い擁壁は、存在感が強いので、門扉・ポストなどの
関連用品もなどの力強い材質を選びます。
5)高い擁壁の下部に設けた植桝は、下に擁壁のベース
(つま先)がある場合もあるので排水について確認します。
また、潅水装置を設置します。
②高い擁壁と緑化の方法
高い擁壁を植物で修景する方法に、(1)覆う、(2)繰り返す、
(3)見え隠れ、(4)区切る、(5)アートにするなどがあります。
1)覆う
覆う手法については、2.5節に記述した通りです。
覆う緑化に適した植物は、
a.常緑性吸着タイプ:アイビー類、ツルマサキ、テイカカズラなど。
b.常緑性下垂れタイプ:ビンカマジョール、ビンカミノールなど。
2)繰り返す
道路に沿って長い擁壁が続く場合、その長さが退屈になら
ないように植栽を規則的に行いリズムをつくります。
下記の写真は、擁壁をつくらずに法面で処理し、曲線状に
つくったサツキを繰り返し植栽した事例です
下記の写真は、各敷地の玄関まわりと敷地境界部に
コニファー類を植えた事例です。
3)見え隠れ
高い擁壁がある場合、その擁壁よりも高い樹木を植える
ことで擁壁の高さは意識から消されます。
4)区切る
手前に樹木を植えて、擁壁を分節化することで、まちなみ
に変化とリズムを与えることができます。
5)アートする
高い擁壁をキャンバスに見立てて、植栽でアートを感じさせる
デザインを行います。
下記の図は、エスバリア仕立てで修景した例です。
エスバリアは、植物を壁面に沿わせて平面的に仕立てる方法
です。
リンゴやイチジクなどの実のなる樹木を仕立てれば、道行く
人にも楽しんでもらえます。
下記の写真は、擁壁に凹凸をつけることで陰影をつくり、
下部に高低差のある花壇を複数配置して、植栽との組み合わ
せで擁壁そのものを造形的なオブジェに創造したものです。
彰国社 著者:水内真理子
【植物を生かしたエクステリアデザインのポイント】
「5章 エクステリアの植栽でまちなみをつくる
5-5 高い擁壁と植栽のデザイン 」より