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コラム
2022年11月21日
ロックガーデンの魅力
ロックガーデンは石と植物が
寄り添う表情豊かな空間
ロックガーデンは、石を組み合わせて配置し、
その隙間に高山植物などを植え込むガーデン
スタイルのことをいいます。
斜面地の土留めを擁壁に替えて、ロックガーデンとす
ることで、流れ出す土を留めると同時に、石と植物が
寄り添う表情豊かな情景を醸し出します。
①ロックガーデンの特徴
ロックガーデンには、独特の意匠性のほかに、植物を
すこやかに育てるいくつもの利点が秘められています。
石の種類は、溶岩系が植物には適しています。
溶岩石は、空気をよく含み、吸水性が高いので、雨や
水やりの際に水を蓄え、さらに水はけのよさをもって
いるので、植物を乾燥から守る天然の水分調整の役割
を果たしています。
石は土中まで熱を浸透させないので、埋め込まれた石
が植物を夏の暑さから守り、根が寒暖の変化を石の下
で調整して、植物の生育を助けます。
日の当たるところには好陽種を植え、石の影には、風
に弱い植物や半日陰を好むものを植栽します。
普通の庭では育ちにく高山や、寒冷地の植物を育てら
れることが魅力のひとつとなっています。
石の配置は、一番大きい石を全体の核にするという
イメージで、大小の石を何個か組み合わせたグループ
で構成し、土に埋まる部分、露出する部分を想定して、
安定感があるように配置します。
②計画・施工のポイント
1)計画のポイント
石の選び方や施工のポイントは、以下の通りです。
a.傾斜地に石組みをするときには、水が流れやすいよう
に、少し間隔をあけます。
b.水はけのよい土壌にします。庭土に砂、パーライト少
しの有機質肥料を混ぜます。
c.石の種類は、空気をよく含み、吸水性の高い植物を乾燥
から守る溶岩系の石がよいでしょう。
d.斜面地の角度は、30度以下とします。
e.一般に、あまり生育の早くない背の低い植物や、やや
乾燥を好む植物が適します。
f.日照を好む植物、日陰を好む植物など、多様な種類を
植栽します。
そのとき、植物の性質に応じて、どちら側に寄り添わせる
か、場所の選択を慎重に行います。
2)ロックガーデンに適する場所と植物
ロックガーデンに適する場所は、敷地境界にある低い擁壁
を兼ねた土留め部分や、オープンガーデンの前庭などです。
ロックガーデンに適する植物は、一般に、あまり生育の早
くない背の低い植物や、やや乾燥を好む植物になります。
代表的な植物としては、アルメリア、イワシャジン、エリカ、
オキシペタルム、カキツバタ、クリサンセマム、コバノタツ
ナミ、チシマタンポポ、ツクモドウダン、ポリムラ、ミヤマ
オダマキなどの山野草などがあります。
アルメリア
イワシャジン
オキシペタルム
ミヤマオダマキ
3)施工のポイント
エクステリアのロックガーデンは、一般に、工程がシンプル
であり、手軽に魅力的な景観をつくることができます。
ロックガーデンを施工する際には、土壌の整備が重要です。
水はけのよい土壌にするためには、庭土に砂、パーライトや
細かく砕いた炭、有機質肥料を混ぜます。
石組みをするときには、水が流れやすいように、少しだけ間
隔をあけることが重要です。
石を埋めることで、水が地表を流れ落ちるスピードを落とす
ことになります。
植栽は、山野草を中心に、何種類かの多年草を選び、季節が
変わっても、いつも緑豊かな表情が保てるように留意します。
石は地上では日向や日影をつくり、さらに風除けや土留めの
役割をはたします。
植栽の配置は、石のどちら側に寄り添わせるかで、場所によっ
ては、風に弱い植物や半日陰を好むもの、逆に日向を好むもの
も植えることができます。
ロックガーデンの魅力は、石が多様な自然環境をつくり出すこ
とで、四季の表情が豊かな空間をつくり出せることです。
春から夏にかけては、植物が石を覆い、かわいらしい花が咲き、
石はほとんど隠れます。
冬枯れの季節には、石肌が大きく顔を出し、石が主役となります。
彰国社 著者:水内真理子
【植物を生かしたエクステリアデザインのポイント】
「4章 植栽と調和する素材の活用
4-6 ロックガーデンの魅力 」より)