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コラム

2022年10月3日

ビオトープガーデンの計画ポイント

 

エクステリアで生物の多様性を考えます。

 

ビオトープ(Biotope)とは、生き物の生息域を

表す言葉であり、本来の概念でいえば、その地域

の在来種や自然環境・生態系を考慮して計画すべ

き大規模なものです。

 

住宅計画でビオトープをつくる際は、小鳥や蝶な

どを呼ぶ樹木や花を植栽したり、水鉢や池などの

水辺の環境をつくり込むことで、メダカやトンボ

などの身近な生物との共存を楽しむスタイルと

することが多いです。

 

●ビオトープガーデン計画のポイント

1)蝶を呼ぶ庭(バタフライガーデン)

蝶が寄り付きやすい草花を植えたり、幼虫の餌となる

「食草」を植え込むことで、庭に蝶を呼び込むことが

できます。

蝶には、それぞれ好みの花があるので、それらの花を

メインに花壇をつくります。

 

蝶と花

園芸用に改良された品種は、一般に蜜が少ないので、

原種に近い素朴なものや、多年草などを植えることが

ポイントとなります。

 

食草を植え込むことで、芋虫などの餌となり、繁殖し

やすい環境となることも考慮したうえで計画します。

 

蝶を呼ぶ花には、アザミ、キバナコスモス、クジャク

アスター、ケイトウ、サンジャクバーベナ、シロツメ

クサ、ナノハナ、ハギ、ヒガンバナ、ブットレア、

ムラサキハナナ、ヤマツツジ、ユリ、ヨメナ、ラベン

ダー類、リアトリスなどがあります。

 

また、食草には、アシタバ、エリンジウム、カタバキ、

カラタチ、キャベツ、クレソン、ゲッケイジュ、サン

ショウ、シロタエギク、チョイシア、ネムノキ、ハギ、

ハボタン、パンジーなどがあります。

 

2)小鳥を呼ぶビオトープガーデン

実のなる樹木(食餌木)を植栽することで、庭にツグミ

やヒヨドリなどを呼び込むことができます。

 

花と小鳥

梅の花にナジロ

食餌木だけでなく、餌台や巣箱、バードバスなどがあれ

ば、食餌木の熟果期にかかわらず、鳥を呼び寄せること

ができます。

 

ただし、あまり人通りが多いと、鳥が警戒して寄り付か

なくなるため、人通りの少ない場所に設置するのが望ま

しいです。

 

 

食餌木を招きたい小鳥別に整理すると、主なものは以下

の通りとなります。

 

a)アカハラ:(中・高木)クロガネモチ、ソヨゴ、

ネズミモチ、ムラサキシキブ類、モッコクなど。

(低木)   シャリンバイなど。

 

b)アトリ:(中・高木)イチイ、ガマズミ、ズミ、ナナカマド、

マユミ、ムラサキシキブ類など。

(低木) ニシキギなど。

 

c)イカル:(中・高木)イロハモミジ、ウメモドキ、ウワミズ

サクラ、エノキ、ズミ、マユミ、ヤマザクラなど。

 

d)カワヒラ:(中・低木)アカシデ、イヌシデ、イロハモミジ、

オオモミジ、ケヤキ、サカキなど。

(低木) ヤマハギ

 

e)キビタキ:(中・高木)マユミ、ムラサキシノブ類など。

(低木) サンショウ、ニシキギ、ヒサカキなど。

 

f)シジュウカラ:(中・高木)イロハモミジ、エゴノキ、ケヤキなど。

 

g)ジョウビタキ:(中・高木)ウメモドキ、ガマズミ、サカキ、ヒサカキなど。

(低木) ナンテン、ニシキギなど。

 

h)ツグミ:(中・高木)イチイ、イヌツゲ、コブシ、シロダモ、

ソヨゴ、ヤマモモなど。

(低木・地被類)ヒサカミ、ヤブランなど。

 

i)ヒガラ:(中・高木)ケヤキ、マユミなど

(低木) ニシキギなど。

 

j)メジロ:(中・高木)イチイ、ガマズミ、ヤブツバキ、

ヤマザクラ、ヤマボウシなど。

(低木) アキグミ、ハマヒサカキなど。

 

k)ヤマガラ:(中・高木)イチイ、エゴノキ、シラカシなど。

 

l)ルビビタキ:(中・高木)サカキ、マユミ、ムラサキシキブ類など。

(低木) ニシキギ、ヒサカキ、ヤブコウジなど。

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なお、それぞれ樹木の塾果期などを把握して計画しますが、

雌雄異株の場合は実のなる雌株を植え、付近に同類がない

場合は雄株も植える必要があります。

 

 

  彰国社  著者:水内真理子

【植物を生かしたエクステリアデザインのポイント】

「3章 ゾーン別植栽計画のポイント

  3-11 ビオトープガーデンのつくり方 」より