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コラム

2022年8月5日

アプローチの植栽計画

 

アプローチは、歩くたびに景色が

変わるシナリオが必要です。

 

アプローチは、来客を迎え入れると同時に、人を

もてなす空間です。

「招く」という意識をもって、アプローチの植栽

計画を行うことで、豊かな玄関前の設えとなります。

そこは、短くとも楽しいプロムナードであり、歩き

進むにつれて移り変わる景色を楽しみ、感動を呼ぶ

ゆとりの空間としたいものです。

 

歩くたびに景色が変わるシナリオをつくり、両側や

少しの隙間もていねいに植栽し、四季の変化や多様

性を生み出します。

デザイン的には、門まわりと一体となって、住まい

と調和していることが大切です。

 

 

①アプローチの植栽計画のポイント

1)シークエンスを考える

(ひとつの景色をその場面だけではなく、関連

 づけて連続させて展開すること)

歩き進むにつれ、移り変わる景色を楽しめるように

工夫します。

 

そのためには、S字形にスラロームさせるなど、

門まわりから距離を長くして見世物をつくります。

 

遠景では、敷地の手前からシンボルツリーを認識

させ、門扉を開けたところでアイストップの景観

木で季節を感じさせ、アプローチ際の下草類、水鉢

や照明器具、ベンチなどの添景物で足下に視線を向

かわせて、全体で目線を楽しませる演出で好印象を

与えます。

 

2)ポーチをなおざりにしない

ポーチは、アプローチと連続した空間です。

来客に挨拶したり、傘を畳んだり、ご近所の人と

立ち話をしたりと、さまざまなシーンが生まれる

場所です。

 

3)アプローチに適した植物

アプローチの植物は、その家の印象を決定できる

重要な役割を担っています。

地被類・草花類の選定は重要で、華やかな印象、

地味な印象、明るい印象、シックな印象など、

住まい手のイメージを決定づけます。

 

また、園路の幅を考慮して、樹種を選定しなく

てはなりません。とげのあるのも同様です。

アプローチの植栽では、季節感の演出も大切です。

訪れるときに、いつも季節の香りがするアプローチ

は心地よいものです。

 

お正月にハボタンの寄せ植え置くなどして、住まい

手が季節・行事を表現する場をあらかじめ想定して

おくことも重要です。

 

4)アプローチの幅員と植栽

標準的なアプローチの幅は1200㎜、最低でも900㎜

必要としますが、傘をさして歩いたり、荷物を持って

いることを想定しているので、アプローチ幅と舗装の

幅員は必ずしも一致させる必要はありません

アプローチの幅員は、舗装の両側に草花を植え、それ

らを含めた寸法とすることで魅力的なアプローチ空間

ができます。

 

 

②植物生かしたアプローチの計画事例

1)枕木枠のメッシュフェンスでハンギングとともに

   視線を誘導した事例

下記の図は、三角地に前庭とアプローチを計画した

事例です。

 

遠景では、シンボルツリーのアオダモで視認させ

て、枕木枠のメッシュフェンスで視線を玄関方向

へ誘導します。

 

中景では、門扉を開けるとき、エゴノキの樹幹を

透してベンチを見せます。

 

近景では、門扉のフレームに置いたシャガやジャス

ミンのコンテナが来訪者に花の香りをプレゼントし、

メッシュフェンスや玄関ポーチに掛けられたハンギン

グが「飛ばし」の手法で全体を統一させます。

 

アプローチは弓形にカーブして動きをつくります。

アンティークのレンガや枕木といった素材で重厚感を

醸しだしています。

 

 

2)アプローチの階段を花で飾った事例

上り勾配のアプローチでは、足下のディテールが目立

ちます。

階段の両側や、床面を季節の草花で覆うのもよい方法

です。

下記の写真事例では、アプローチをS字形に曲げ、

アイストップに景石を配置し、その前置きにギボウシ、

見越しにアジサイを配植しています。

 

 

入口部分にあるフェスッカ・グラウカは、小さくとも

独特の存在感があり、風を感じさせる動きのあるアプ

ローチとなっています。

 

草花は、ブルー系を基本にうす紫、白を多くし、アク

セントとしてプラキカム、クリサンセマのうす紅色や

黄色を選んで、全体に小花を主体として上品で可愛ら

しく仕上げています。

 

手前には淡い色を用い、奥には濃い色の花を配植する

ことで奥行き感を出すことができます。

 

 

  彰国社  著者:水内真理子

【植物を生かしたエクステリアデザインのポイント】

「3章 ゾーン別植栽計画のポイント

  3-2 アプローチの植栽計画  」より