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コラム
2022年7月15日
囲む
囲む
「囲む」とは、形態と素材で空間の質を
決めること。
①囲まれる区間の質
造園家のJ.O.サイモンズは、「空間は、囲うこと
で初めて成り立つ。囲み方(形態と素材)で空間
の質が決まる。」と言っています。
四ツ目垣では、向こう側が透けて見える程度に
ゆるやかに囲み、また城郭では、威厳をもって
囲みます。
四ツ目垣
「囲む」ということは、空間としての領域を
明示しているばかりではなく、精神的な居場
所をも知らしめるととなります。
人は本能的に、囲いの中に居場所を求めます。
建築でも、アルコープがつくられたり、喫茶店でも
壁を背にする席を女性に譲ったりするのは、それが
居心地のよいと感じられるからです。
※アルコープとは「部屋の一部を外側へ張り出させた部分」のこと。
庭においても、意図的に囲まれた場所を設けると、
居心地のよい空間となり、それが人の視界に入る
ことで居心地のよさが認識され、庭全体の印象が
よくなります。
サイモンズは、「垂直な囲みの度合いによって敷地
のもっているボリューム感が変わる。」とも言って
います。
②囲いの事例
「囲い」は、使用する材料と囲いの密度および
高さによって印象が変わるので、目的に応じて
適切に計画します。
ウッドフェンスや生垣など、木質系のものは人に
やさしい印象を与え、居心地のよさをつくります。
1)庭の背景になるウッドデッキ
最近、木製のフェンスが好まれるのは、「囲む」
ことが不自然でなく、遠景やまちなみと調和し、
さらに植栽と馴染んで庭の一部として機能する
からでしょう。
庭の南に位置する囲いは、通風・日照を配慮した
デザインにします。
光や風の調整要素として、ウッドフェンスにスリット
を入れた事例です。
2)プライバシーのための囲い
一般に、南に面するリビングの正面は、向かいの
家の北側(裏側)です。
すると、毎日リビングから隣家の土留め擁壁と、
ブロックを見て暮らすことになります。
このような場合、隣地との境界に遮蔽(しゃへい)密度の
高いウッドフェンスを建てます。
基礎などの関係から、40㎝ほどは後退することに
なりますが、敷地内のウッドフェンスは、自分の庭を
意識し、囲われることで安心感も生まれます。
3)機能を区分させるため、ゆるやかに囲む
庭が広い場合、庭の機能に応じて適度に分散します。
枕木のフレームフェンスとスチールのメッシュ
フェンスで囲いをつくった例です。
メッシュフェンスは、ゆるやかな囲いをつくり、
視覚的には連続した空間として見せることが
できます。
4)建物と一体化した囲い
住宅の外装材と同一の素材で、パターンも似た感じに
して囲いをつくると、少し離れて見ることで、囲いは
住宅の一部として立体的に見えます。
歩行者から室内への視線を遮り、室内からは床高が
高いので、道路の様子がわかります。
5)生垣で囲む
建築協定などで、道路側の囲いは生垣と定めている
地域は多いです。
注)ジョン・オームズビー・サイモンズ/バリー・W・スターク著、都田徹、
Team9訳「ランドスケープアーキテクチェア」鹿島出版会、2010年
彰国社 著者:水内真理子
【植物を生かしたエクステリアデザインのポイント】
「2章 植栽計画の基本的な技法
2-12 植栽による空間演出⑪ 囲む 」より