column
コラム
2022年7月11日
吊るす
吊るす
「吊るす」とは、ハンギングなどで季節の
植物を植え、フェンスなどに吊るすこと。
古来、日本では「釣忍」と呼ばれる、風鈴の上に
玉状のトキワシノブを、舟形の器に植え込んだも
のを吊るして楽しんでいました。
吊るすことで、季節の花を目の高さで鑑賞すること
ができます。
小さなものでも趣を添える劇的な効果があります。
①ハンギングを使ったデザイン
1)ハンギングの位置
ハンギングの植栽には、基本的に十分な日光が
必要です。
日照時間は、一日5~6時間が望ましいです。
強風の当たる場所は、避けなければなりません。
部屋から鑑賞することもあるので、室内からの
見え方も考えます。
南や東向きが理想ですが、北向きでも植物を
上手に選べば、問題はありません。
掛ける高さは、目線より20~30㎝、上の
ほうがきれいに鑑賞できます。
高すぎると目が届かず、害虫を見逃しやすく
なり、水やりや肥料やりが、やりにくいので、
注意が必要です。
2)ハンギングのデザインのポイント
デザインの基本は、季節感を出すことです。
お正月やクリスマス、夏休みなど行事や季節に
ちなんだ植物を入れて飾ると、生活の中に季節
を感じ取ることができ、豊かな空間になります。
家庭では、バスケットの大きさに限りがあるの
で、多くの色彩を用いずにテーマ色を決めて、
全体の調和を図ることが大切です。
周囲の色・素材にも注意しなければなりません。
バスケットの中に植栽する植物は、花もの、葉も
の、野菜、三野草など、植物の種類を絞って、
特徴的に仕立てます。
さらに、玄関まわり、フェンスなどの設置場所や
住まいのスタイルを勘案しながら、周囲の情景と
のバランスを考えてつくります。
3)ハンギングのスタイル
ハンギングバスケットには、縦長、横長、球形な
どがあり、飾るスペースや見せる方向に合わせて、
スタイルを選びます。
通路に掛ける場合などは、真正面から見ることが
できないので、歩行の状況によって、多方向から
見せる工夫をすることが大切です。
バスケットの素材には、プラスチック製スリット
バスケット(上部、側面植え可能)、テコラコッタ
(上部植えのみ)、木製コンテナ(上部植えのみ)、
ワイヤー製(ヤシマット敷、上部、側面可能)などが
あり、空間のデザインに調和するものを選定します。
②ハンギングのつくり方
(プラスチック製スリットバスケットの場合)
スリットバスケットは、スリットに花の根株を横向き
に差し込むようにしてつくります。
作業の前に、完成時の姿をイメージして、下段の
スリットに中心となる花を、正面となるようにし、
上段のスリットに植える植物のバランスなども考慮
して配置を決めます。
作業手順の概略は下記の通りです
a)鉢底に、鉢底石を水抜き穴の上まで入れる。
b)培養土を暑さ約3㎝入れる。
c)花株の肩部分(上部)の土を少し落とす。
d)鉢のスリット部分に上部からスライドさせて植え込む。
e)下段を植え込んだら、培養土を株の隙間にしっかり入れる。
f)培養土を入れたあと、中段にも同じ要領で植えていく。
g)上段にも植えていき、バランスを確認する。
h)最後に、水苔を乾燥防止に敷き詰める。
このあと、たっぷりと水を与えて2~3日は半日陰で
ならします。
③ハンギングの管理と注意点
1)ハンギングの利点と欠点
ハンギングは空間に飾るため、病虫害の発生は
比較的少ないです。
また、移動可能であり、広い庭がとれないという
日本の住宅事情にも適しています。
地植えやコンテナと違い、目線に花があるという
楽しさがあります。
植物の使い方を工夫することで、応用が利き、
バリエーションが豊富になります。
適切な管理を行えば、数年間は維持できます。
壁に数個であれば、ローテンションして、趣を
変える楽しみも生まれます。
存在感があるので、一個あれば見せ場にする
ことです。
欠点は、小さな植栽環境であるので、乾きが早く
水枯れしやすいことです。
2)管理について
水やりは、土の表面が乾燥したら、たっぷり施します。
施肥は、元肥が流出するので、液肥を1週間から10日に
一回、与えます。
花柄摘みは、こまめに行います。
彰国社 著者:水内真理子
【植物を生かしたエクステリアデザインのポイント】
「2章 植栽計画の基本的な技法
2-11 植栽による空間演出⑩ 吊るす 」より