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コラム
2022年7月1日
区切る
区切る
「区切る」とは、構造物をつくらず植栽で
境界をつくること。
異なった役割をもつスペースを分け隔てるために、
「区切る」方法が必要になります。
構造物などで区切ってしまうと、敷地が狭く感じ
られたり、通気性などの面からも植物の生育環境
を阻害(そがい)することがあります。
植栽を利用して、区切ったことを感じさせずに
領域を隔てる方法を考えます。
植栽の密度や高さなどで、区切ることの強弱を
うまく処理することができます。
生垣で強く区切ることから、一鉢のコンテナを置く
ことで何となく区切るというレベルまで、その場の
雰囲気に合わせてデザインします。
また、実は区切られてはいるが、まわりの風景と
馴染んで一体化し、区切られていることに気がつか
ない設え(しつらえ)も、植栽では可能です。
植栽の高さや植え込みの幅、植える樹種の形などで
構造物では出せない区切り方をすることができます。
①強く区切る
1)重層化した区切り
生垣で区切る場合、機能的な側面だけではなく、
四季折々に表情豊かな囲いとすることも考慮しな
ければなりません。
また、生垣は生長すると足下が幹だけとなり、
野良猫などの侵入を容易にします。
これを防止するためにも、高さを変えて厚みを
もたせ、低木や下草などを植えて重層的に区切
ると、季節感も出て、ひとつの見せる「庭」と
もなります。
まちなみに対しても、豊かな緑を提供することが
でき、環境価値も高める効果があります。
2)幅の広い地被類で区切る
下記の図は、見た目には緑が全面に広がっている
だけですが、踏めない草花を植えることで、人の
侵入を止めて、区切る効果を出しています。
②ゆるやかに区切る
1)空間の質の違いを区切る。
主庭の中の和風庭園のゾーンと洋風庭園のゾーンを
区切る場合は、その境界部分で築山の一部を突出させ
るだけで、十分に区切る機能は発揮できます。
2)景観としての植栽で所有区分を明示する。
所有区分の境界をきっちりつくってしまうのは、
味気のないものです。
木々をランダムに植えて、ひとつの風景として
設え(しつらえ)ながら、機能的には他と区切ると
いう方法は、区切ることがデザインであり、
季節感や奥行き感などが表現でき、庭の景観
づくりにはとても有効です。
彰国社 著者:水内真理子
【植物を生かしたエクステリアデザインのポイント】
「2章 植栽計画の基本的な技法
2-8 植栽による空間演出⑦ 区切る 」より