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コラム
2022年6月29日
見え隠れ
見え隠れ
「見え隠れ」とは、人が歩くにつれ風景が
変わること。
アプローチは、敷地に足を踏み入れてから玄関ドアを
開けるまでのひととき、期待やときめきを込めて歩む
プロムナード(散歩道・遊歩道)です。
この空間を植栽による「見え隠れの方法」で
演出します。
「見え隠れ」の方法は、完全に閉鎖するのではなく、
目標物の前に植栽し、あるいはコンテナに季節の花を
咲かせ、小枝や花の間から、少しは見えるが、スト
レートにすべてを見せない「曖昧(あいまい)さ」を
残した方法です。
人が歩くのにつれて風景が変わる(シークエンスという)
動きのある設え(しつらえ)です。
①外からの視線に対し見え隠れさせる
1)道路沿いには目隠しとして植栽を用いる。
道路沿いに高い塀をつくるのではなく、植栽で
ゆるやかに隠す方法です。
敷地境界部分に植栽する混植の組み合わせでは、
針葉樹と落葉樹の組み合わせで見え隠れをつく
ります。
植栽の中心付近に常緑の針葉樹Aを、その周囲に
不等辺三角形に落葉樹を配置します。
2)シークエンスで見え隠れするアプローチ
門から玄関へのアプローチでは、目的である「玄関」
を歩く人に意識させながら、正面の景観木に誘導し、
曲がりながら次なるアイストップの樹木に視線を楽し
みながら移動させ玄関へ導きます。
※アイストップとは、「人の目を向けさせ注意を引く為に意図的に
置かれた建築物やオブジェ、樹木」ことです。
樹木の間から目的地を見え隠れさせることで、
アプローチに期待感や季節の趣を与える方法です。
②さりげなく隠す
1)隣棟間のプライバシー確保
市街地の住宅では、道路際にトイレや浴室の窓が
並ぶことがよくあります。
窓は、不透明なガラスで中が見えにくくなってい
ますが、気配は感じられ、夜になると、シルエット
が見えてしまいます。
それを考慮して、視線を遮る(さえぎる)フェンスなど
を建てると閉鎖的になり、まちなみ景観をも阻害して
しまいます。
しかし、植栽を窓際に施すと、プライバシーが守ら
れるだけではなく、通りへの景観にとってもよいこ
とで、室内からも木々が揺れる姿が感じられて癒し
(いやし)の効果が与えられることができます。
2)便利な場所でも目立たない自転車置場
自転車置場は、使いやすくないと無用の長物になって
しまいます。
しかし、便利な場所に自転車を置くと、雑然とした空間
になります。
門柱と同じ仕様の壁でゆるやかに囲み、見え隠れで処理
すれば問題は解決できます。
彰国社 著者:水内真理子
【植物を生かしたエクステリアデザインのポイント】
「2章 植栽計画の基本的な技法
2-7 植栽による空間演出⑥ 見え隠れ 」より