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コラム

2022年6月24日

覆う空間演出

 

覆うことは、異質な空間を植物が融合

 

屋上緑化や壁面緑化で建物を覆うと、断熱性

能や居住性能が向上することは、周知の通り

ですが、「覆う」ことで、空間の新しい演出

効果も期待できます。

 

植物は、木陰をつくり緑陰をもたらします。

 

パーゴラや藤棚は外部空間に内部空間的な要素を

創り出します。

 

藤棚

高木は、庭を覆い、落ち着いた半野外空間をつくり

出します。

 

大きな葉のシダ類やツワブキなどは、その下に日陰を

好む苔類や下草類を育て、小動物の生息環境を守り、

庭に多様な生物の世界をつくり出します。

 

シダ

 

ツワブキ

 

覆うことは、異質な素材や空間を適合させると

いう意味でも重要です。

 

 

①覆う効果を利用した手法

植物は自然そのもので、常に成長している有機的

なものです。人は植物を見ると安息感を得ます。

植物には、異質な素材を包みこむことで同じ季節の

表情をつくり周囲と調和させる力があります。

 

a)植物で覆うことで異質な素材を調和させる

つくばいや灯篭を周囲の役木、苔類といった植物で

覆い庭に調和させることが出来ます。

 

つくばい

 

灯篭

つくばいや灯篭の固い素材は苔類で覆われて周囲の

景観に同化します。

 

 

2)植物で覆うことで圧迫感を調和させる。

下記の写真は、道路から地盤が上がっており、

なおかつ建物までの距離が短く、十分な階段の

スペースがとれなかった住宅の例で、そうした

悪循環を植物で覆うことで克服しています。

 

急勾配のため蹴上げと踏面が少なく、通常では

圧迫感を感じさせるので、水平線を強調させる

ように階段の幅を広くとり、人の歩くところだけ

レンガ貼りとしています。

残りの踏面部分は土のまま残し、草花を植えています。

 

草花は階段を覆い、まるで花畑の中を歩いている

ような階段になっており、その心地よさのほうが

階段のつらい寸法に勝っています。

 

文字通り階段状になっているので、道路からも花が

よく見え、道行く人々に癒しを与える効果となって

います。

 

これは草花の「覆う」という効果を最大限利用した

です。

 

 

彰国社  著者:水内真理子

【植物を生かしたエクステリアデザインのポイント】

「2章 植栽計画の基本的な技法

      2-5 植栽による空間演出④ 覆う   」より