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コラム
2023年1月27日
「色重ね」でコーディネートした住宅地
「色重ね」でコーディネートした住宅地
滋賀県コモンステージ彦根東/設計:住宅メーカー
彦根駅の南東部に位置する四季の彩りに包まれた
212戸のまちなみです。
以前から現場にあった樹木と石を活用して、その場
の記憶を受け継ぎました。
人と自然が織り成すハーモニーを奏で、時とともに
風合いを増すことで、心豊かな暮らしの舞台づくりを
行っています。
各住戸には、この地に根差した木々を植栽して、生態
系の維持を図ります。
木々は各々が寄り添いながら、また、建物に添うよう
に傾きや向きに配慮しながら植栽しています。そうす
ることで、まちなみに心地よいリズムを与えて、それ
ぞれの建物のファサードをやさしく包んでいます。
※ファサードとは、「建物を正面から見たときの外観」のことです。
3m以上の高木の大半は落葉樹とし、季節感を演出
するとともに微気候調整の役割を果たしています。
■季節の花緑~色重ねの多様な風景がまつに
彩りを添えます。
江戸の華やかさを今に伝える国宝『彦根屏風』は、
描かれた人物15人の一人一人の衣装のさまざまな
色が重なって、ひとつの絵ができています。
このまちは、その「色重ね」の方法に学んでいます。
まず、風土に適応する植物を黄、青、赤、白に分類
し、背景をなす緑を加え、5つに分類して、約150
種類の花と緑を抽出しています。
「色重ね」として「井伊重ね」「黄金重ね」「湖重ね」
「伊吹重ね」「月重ね」「柑重ね」などを設定し、各
住戸の建物や日照条件などを踏まえた植栽計画を進め
て、各住戸の個性を演出しています。
■庭の特徴とコンセプト
公園に面した「井伊重ねの庭」は、まちかどガーデンです。
井伊家の赤備えにちなみ、鮮やかな赤をテーマにした草花
とつる性植物に覆われるパーゴラが特徴です。夏には鮮や
かなサルスベリの大木がまちかどを彩ります。
隣接する「黄金重ねの庭」は、鮮やかな黄色をテーマに
しており、門塀のアクセントタイルもこれに準じています。
「湖重ねの庭」は、琵琶湖の爽やかな水面のイメージを
反映し、「月重ねの庭」は、日陰の中で明るさを醸し出し
ます。
まちかどが、それぞれ異なる表情を見せ、彩り豊かなまち
なみを演出しています。
また、それぞれの庭が人と人がコミュニケーションをとり
ながら、草花に触れ合える場所になっています。
彰国社 著者:水内真理子
【植物を生かしたエクステリアデザインのポイント】
「6章 植物を生かしたエクステリアの事例
事例6 「色重ね」でコーディネートした住宅地」より