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コラム
2022年7月18日
くぐる・つなぐ
くぐる・つなぐ
「くぐる・つづる」とは、ゲートによる
空間の分離と接続のことです。
①ゲートの効果
狭い庭空間でも、その中で、ある程度、広さを
演出できる方法が、ゲートによる空間の分離です。
ゲートは、レンガやコンクリート、木など、さま
ざまな素材でつくることができますが、住宅との
調和、庭のデザインや広さによって、その素材や
構成(どのくらい向こうを隠すか、透(かすかなど)
を検討する必要があります。
ゲートのもうひとつの効果としては、「くぐる」
という行為が、人に高揚感(こうようかん)や期待
感を与え、楽しさを感じてもらうことができるこ
とが挙げられます。
昔から、寺の門、神社の鳥居、日本庭園の庭門な
ど「くぐる」要素は多く見られました。
寺の門
神社の鳥居
庭門
茶室のにじり口などは、その最たるもので、これは
結界として、神聖な領域へ頭を垂れて入るという、
心の切り替えの装置として用いられてきたものです。
茶室のにじり口
壁や扉として、完全に空間を仕切るのではなく、
「くぐる」という行為自体曖昧(あいまい)ですが、
しかし、しっかりと空間領域を分け、次の領域へ
入るという意識を人に持たせる効果があります。
注連縄(しめなわ)などは、ひとつの典型ですが、縄
という柔らかい素材を設けることで、しっかりと
神域と現世の結界の役割を果たしているのです。
しめ縄
領域が分けられる人は、Aの領域の面積+Bの
領域の面積というふうに感じた途端、全体のCの
面積は、実際より大きいと感じてしまうのです。
全体を見渡せないことで、Aの面積+Bの面積で
広さをとらえようとして、面積の認識が混乱して
しまうのです。
②ゲートによる演出を施した事例
1)空間に領域性をもたせるゲート
下記の写真は、隣地からの壁面後退の敷地に
ある、幅がわずか1.2mほどの通路を庭として
設けた事例です。
狭い庭をあえて樹木の幹で区切り、奥行き感を
出しています。
庭の奥のコンテナと、樹木によるゲートのライン、
両方に視線が行き、空間の豊かさが感じられます。
ゲートは、結界として効果も期待できます。
2)門構えとしてのゲート
洋風住宅の門構えで、植物を生かしたゲートの
ニーズは高く、下記の事例では、枕木を素材と
した力強いフレームでゲートを構成し、上部に
植物を這わせて、ゲートの付近は少しうす暗い
空間として緊張感をつくり、その奥は、明るく
開放的にすることで、ドラマチックな演出に
成功しています。
門扉の両側は、スチールメッシュに植物を絡ませ、
住宅の玄関を直接見せないスクリーンとし、門扉の
手前のコンテナに植えたマーガレットと、門扉の
花台に置いた少し小さいコンテナとの対比も遠近感
を強調し、狭い玄関まわりのスペースを豊かな空間に
しています。
3)洋の庭、和の庭の接線
リビングの隣が和室という例は多いです。
当然、庭もリビングの手前は洋の庭で、和室の前の
庭は和の庭になってほしいものです。
しかし、ただ洋と和を並べたのでは、どうしても
違和感が生じます。
下記の写真および図の住宅では、木の枠組みゲート
で、柔らかな結界を設けました。
洋の庭の背景は、スチールメッシュのトレリス、
和の庭の背景は、木を横貼りしたウオールとし
ました。
将来的に、トレリスに緑が絡まれば、ゲート
効果がさらに高まると思います。
彰国社 著者:水内真理子
【植物を生かしたエクステリアデザインのポイント】
「2章 植栽計画の基本的な技巧ト
2-13 植栽による空間演出⑫ くぐる・つなぐ 」より