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コラム
2022年6月27日
前置きと見越し
前置きと見越し
「前置き」と「見越し」とは、主役(灯篭・つくばい等)を
引き立てる植物たちのことです。
樹木には、それぞれ単体として見せる植栽も
ありますが、「前置き」や「見越し」といった
方法で添景物、和の空間においては、灯篭や
つくばいなどといったものを引き立てるこどが
できます。
三千院のつくばい
現代の住宅では、機能門柱やベンチなどといった
オーナメント(装飾物)を美しく見せるのに、植栽の
前置きや見越しは欠かすことのできない方法です。
①前置きと見越しとは
「前置き」とは前付(まえづけ)ともいい、植栽単位
または主役となる添景物の前方にあしらい、添え物
として小木を植えることです。
その大小および樹種は主になるものとの釣り合い具合
で定まります。
「見越し」とは、主役となる添景物の背景に用いますが、
後方にあってその一部が見える樹木を「見越しの樹」と
いいます。
日本の伝統的な造園技法を伝授した江戸時代の「築山庭造伝」
(北村援琴著伝)に記載されている「茶庭定式蹲踞之据方
(ちゃにわじょうしきつくばいのすえかた)」にも、つくばいや灯篭の
背景には「見越しの樹」を植え、その前には「前置き」の
植栽がなされている様子が図示されています。
②前置きと見越しの手法の事例
下記の写真は、門の手前に前置きの低木、門の向こう
側に見越しの樹を植えた例で、全体的に軽快な印象を
醸し出しています。
下記の写真(右)は、表札、インターフォン、ポスト機能
を兼ね添えたオリジナルの機能門柱ですが、リフォーム
施工前(左)はトレリスの門柱が、ただ置かれた状態で
庭の中に溶け込んでいません。
リフォーム工事では、雑駁(ざっぱく)としていた門柱を小さ
く枕木でつくり替え、手前に多年草を植栽し、奥には
鉢植えの常緑の植栽を置いて、前置きと見越しの方法を
取り入れて陰影と奥行き感をつくり出しています。
前置きと見越しは、人工的な素材を木や草花や樹木を
使って場所に調和させ、主役としての存在感を引き出し、
空間を引き締める特徴的な方法です。
※雑駁とは、「雑然としていて、まとまりがない」こと。
彰国社 著者:水内真理子
【植物をj生かしたエクステリアデザインのポイント】
「2章 植栽計画の基本的な技法
2-6 植栽による空間演出⑤ 前置きと見越し 」より