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コラム
2022年6月22日
隠す技法の具体策
隠す技法の具体策
人間の脳は視覚でとらえたものを同じ比率で
見ていません。
目では見ていても、脳では認識されていません。
脳は見たいものを本能的に選択しています。
植栽計画ではそれを利用して、脳が選んでくれる
美しいもの、きれいな樹形であったり、花であっ
たり、引き立てられた造形物であったりを見せて、
見たくないものの存在を消し、その位置関係を検討
してドラマチックな空間を創造すべきです。
「隠す」ことは実は
「見せる」=「魅せる」ことになるのです。
①平面的な方法‥‥アプローチを工夫する。
門からアプローチを歩いて玄関にいく時、門を
入った瞬間、玄関が見えてしまうと、距離感を
感じられません。
距離に応じてアプローチを迂回するような形に
するか、樹木を植えて視界を一旦遮るなどして、
目的地である玄関を隠します。
②立体的な方法‥‥構造物を工夫する。
構造物で隠す場合は、その材質から隠す強さを
感じます。
コンクリートの壁やブロック塀などの重量感の
あるものは心理的に「絶対見せない」という高圧
的な感じを与え、生垣などの植物は、風に揺れる
など動きがあるので柔らかな印象になります。
トレリスなどの構造物はメッシュで微妙な見え
隠れを演出し、それにつる性植物が絡まることで、
風通しを確保しながら見えたり見えなかったり
する部分が「何となく隠す」感じを与えます。
③樹木で隠す
樹木で何かを隠すときは、3次元的な感覚で考えなけ
ればなりません。
高木は3㍍以上の高さがある場合が多く、植えたとき
は低くても生長することを考慮しなければなりません。
立面的に何かを隠す以外に、覆い被さるような関係に
なり、人間の下からの目線に対して空を覆うような
感覚で隠す事ができます。
隣家の2階からの視線を遮るなどの効果は大いに期待で
きます。
樹木の枝や葉もメッシュと同じようなことがいえます。
すなわち、落葉樹で冬に葉がなくなると、隠す効果が
ないのではないかと思われがちですが、細かい樹木の
枝は遠くから見るとひとつのかたまりにみえ、枝の間
からはほとんど中は見えなくなります。
彰国社 著者:水内真理子
【植物を生かしたエクステリアデザインのポイント】
「2章 植栽計画の基本的な技法
2-4 植栽による空間演出③ 隠す 」より